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 あれから涼香と朋也は、同じ店で三時間も粘ってしまった。
 酒と料理が美味しいのはもちろん、ざっくばらんとした店の雰囲気がまた、ついつい長居させてしまう。

(そういえば、夕純さんと来た時もこれぐらいいたっけ?)

 また、夕純と来た時のことを想い出す。
 だが、あの時は、上司と一緒だという気持ちが最優先に働き、今日ほど気を緩めることが出来なかった。
 もちろん、夕純の人柄を分かってからは好きになっているが、やはり、恋愛対象として見ている相手だとずいぶんと違う。
 とはいえ、酒の力を借りてハメを外し過ぎている自覚も、酔っ払っていながらもよく分かっている。

「ああ、なんか気分いいわあ!」

 ハメ外しのついでだと思い、涼香は両手を広げ、夜の空気をめいっぱい吸い込む。
 火照った身体に、春先のひんやり感はとても心地良い。

「――山辺さん、相当酔っ払ってねえ……?」

 案の定、朋也が呆れた様子で訊ねてくる。

 涼香はそんな朋也に向けて、ニッコリと満面の笑みを見せた。

「酔っ払ってるわよ。けど平気よお?」

「――まあ、歩き方はわりとしっかりしてるけどな……」

「そうよ? 私はこれでも酒強いし、記憶を失くしたこともない。ちゃんとセーブはしてんのよ?」

「うん……、俺よりかなり強いっつうのはよく分かった……」

 そこで会話が途切れた。
 時おり人とすれ違うことはあっても、辺りがあまりにも静か過ぎて、かえって耳鳴りが煩く聴こえる。
 この沈黙は、酔っ払っているからいいもの、シラフだったらとても耐えられない。
 酒に強い自分に――いや、酒飲み一家に生まれさせてくれた両親に感謝するべきか。
 変な感謝の仕方だが。