◆◇◆◇
あれから涼香と朋也は、同じ店で三時間も粘ってしまった。
酒と料理が美味しいのはもちろん、ざっくばらんとした店の雰囲気がまた、ついつい長居させてしまう。
(そういえば、夕純さんと来た時もこれぐらいいたっけ?)
また、夕純と来た時のことを想い出す。
だが、あの時は、上司と一緒だという気持ちが最優先に働き、今日ほど気を緩めることが出来なかった。
もちろん、夕純の人柄を分かってからは好きになっているが、やはり、恋愛対象として見ている相手だとずいぶんと違う。
とはいえ、酒の力を借りてハメを外し過ぎている自覚も、酔っ払っていながらもよく分かっている。
「ああ、なんか気分いいわあ!」
ハメ外しのついでだと思い、涼香は両手を広げ、夜の空気をめいっぱい吸い込む。
火照った身体に、春先のひんやり感はとても心地良い。
「――山辺さん、相当酔っ払ってねえ……?」
案の定、朋也が呆れた様子で訊ねてくる。
涼香はそんな朋也に向けて、ニッコリと満面の笑みを見せた。
「酔っ払ってるわよ。けど平気よお?」
「――まあ、歩き方はわりとしっかりしてるけどな……」
「そうよ? 私はこれでも酒強いし、記憶を失くしたこともない。ちゃんとセーブはしてんのよ?」
「うん……、俺よりかなり強いっつうのはよく分かった……」
そこで会話が途切れた。
時おり人とすれ違うことはあっても、辺りがあまりにも静か過ぎて、かえって耳鳴りが煩く聴こえる。
この沈黙は、酔っ払っているからいいもの、シラフだったらとても耐えられない。
酒に強い自分に――いや、酒飲み一家に生まれさせてくれた両親に感謝するべきか。
変な感謝の仕方だが。
あれから涼香と朋也は、同じ店で三時間も粘ってしまった。
酒と料理が美味しいのはもちろん、ざっくばらんとした店の雰囲気がまた、ついつい長居させてしまう。
(そういえば、夕純さんと来た時もこれぐらいいたっけ?)
また、夕純と来た時のことを想い出す。
だが、あの時は、上司と一緒だという気持ちが最優先に働き、今日ほど気を緩めることが出来なかった。
もちろん、夕純の人柄を分かってからは好きになっているが、やはり、恋愛対象として見ている相手だとずいぶんと違う。
とはいえ、酒の力を借りてハメを外し過ぎている自覚も、酔っ払っていながらもよく分かっている。
「ああ、なんか気分いいわあ!」
ハメ外しのついでだと思い、涼香は両手を広げ、夜の空気をめいっぱい吸い込む。
火照った身体に、春先のひんやり感はとても心地良い。
「――山辺さん、相当酔っ払ってねえ……?」
案の定、朋也が呆れた様子で訊ねてくる。
涼香はそんな朋也に向けて、ニッコリと満面の笑みを見せた。
「酔っ払ってるわよ。けど平気よお?」
「――まあ、歩き方はわりとしっかりしてるけどな……」
「そうよ? 私はこれでも酒強いし、記憶を失くしたこともない。ちゃんとセーブはしてんのよ?」
「うん……、俺よりかなり強いっつうのはよく分かった……」
そこで会話が途切れた。
時おり人とすれ違うことはあっても、辺りがあまりにも静か過ぎて、かえって耳鳴りが煩く聴こえる。
この沈黙は、酔っ払っているからいいもの、シラフだったらとても耐えられない。
酒に強い自分に――いや、酒飲み一家に生まれさせてくれた両親に感謝するべきか。
変な感謝の仕方だが。