◆◇◆◇
しばらく歩いて、ようやく目的の居酒屋に到着した。
「こいつはまた、なんつうか……」
朋也は言葉を濁したが、言わんとしていることはすぐに察した。
「すっごくレトロでしょ?」
涼香は『オンボロ』と言いそうになったが、中に聴こえてしまっては拙いと思い、あえていい表現を使った。
朋也は、「ああまあ」と曖昧に答えるも、明らかに、『すっげえボロいな』と言いたそうにしている。
というか、表情にはっきりと出ていた。
「ま、建物はこんな感じだけど料理の味は保証するから。お酒の種類も豊富だし、ほんとお勧めよ?」
「ふうん……」
涼香が強く推しても、まだ半信半疑なようだ。
だが、いくら口で説明しても疑いが晴れるわけではない。
そう思い、半ば強引に朋也の二の腕を掴み、立て付けの悪い扉を開けた。
中に入ると、以前に来た時と同様、ムンとした熱気を感じた。
ちょうどお腹を空かせていたから煮物のいい匂いが食欲をそそる。
一番奥の席が落ち着くな、と思っていたら、運良く空いていた。
涼香は朋也を引っ張る格好で、ズンズンと店の奥まで進む。
そして、そこでようやく朋也の腕を解放し、互いに向かい合って腰を下ろした。
「まずはビールにしとく?」
涼香が訊ねると、朋也は黙って頷く。
多分、全ての注文を涼香に任せる気でいるのかもしれない。
涼香は店の女将を呼び、思い付くままに注文をしてゆく。
朋也の好みを聞いていなかったから適当に頼んでしまったが、もしも食べたいものがあれば追加注文すればいい、と軽い気持ちで思った。
しばらく歩いて、ようやく目的の居酒屋に到着した。
「こいつはまた、なんつうか……」
朋也は言葉を濁したが、言わんとしていることはすぐに察した。
「すっごくレトロでしょ?」
涼香は『オンボロ』と言いそうになったが、中に聴こえてしまっては拙いと思い、あえていい表現を使った。
朋也は、「ああまあ」と曖昧に答えるも、明らかに、『すっげえボロいな』と言いたそうにしている。
というか、表情にはっきりと出ていた。
「ま、建物はこんな感じだけど料理の味は保証するから。お酒の種類も豊富だし、ほんとお勧めよ?」
「ふうん……」
涼香が強く推しても、まだ半信半疑なようだ。
だが、いくら口で説明しても疑いが晴れるわけではない。
そう思い、半ば強引に朋也の二の腕を掴み、立て付けの悪い扉を開けた。
中に入ると、以前に来た時と同様、ムンとした熱気を感じた。
ちょうどお腹を空かせていたから煮物のいい匂いが食欲をそそる。
一番奥の席が落ち着くな、と思っていたら、運良く空いていた。
涼香は朋也を引っ張る格好で、ズンズンと店の奥まで進む。
そして、そこでようやく朋也の腕を解放し、互いに向かい合って腰を下ろした。
「まずはビールにしとく?」
涼香が訊ねると、朋也は黙って頷く。
多分、全ての注文を涼香に任せる気でいるのかもしれない。
涼香は店の女将を呼び、思い付くままに注文をしてゆく。
朋也の好みを聞いていなかったから適当に頼んでしまったが、もしも食べたいものがあれば追加注文すればいい、と軽い気持ちで思った。