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 待ち合わせ場所の駅には、三十分以上も前に着いてしまった。
 本当に、どれだけ今日を楽しみにしていたのだろう。
 恥ずかしいと思いつつ、ちょっとだけ、そんな自分を微笑ましくも感じてしまう。

 朋也を待っている間、涼香は近くのベンチに腰を下ろし、携帯電話を弄っていた。
 最近は携帯で様々なサイトを覗けるようになったから、ポケットベルを持っているだけで周りが盛り上がっていた高校の頃を考えると、本当にとても便利になったものだと感心する。

 ただ、パソコンと違って見られるサイトはだいぶ限られるし、サクサク見られるわけではない。
 ディスプレイはカラーになってはいても、画像自体はとても暗くて見づらい。
 だが、携帯の進化は年々進化を遂げているから、そのうち、パソコンに負けずとも劣らない携帯が生まれてもおかしくないかもしれない。

(時代の変化に着いてけないよ、私……)

 まだ二十代前半だというのに、年寄り臭いことを考えてしまう。
 同時に、こんな発言をしたら、もっと年上の夕純はどんな反応を示すだろうか。
 さすがに怒りはしないだろうが、『そんなこと言わないでよ』と、ちょっと哀しそうにされてしまうかもしれない。

 その夕純とは、初めて飲みに誘われたことがきっかけとなり、それからもたまにふたりで仕事帰りに飲む機会が増えた。
 夕純は本当に涼香を気に入ってくれているらしく、あの日以降も親しく接してくれる。
 会社でも一緒に昼食を摂ることが多くなったから、周りの同僚にはとても驚かれている。
 そして、何となく距離を置かれつつあるのも薄々察していた。
 だが、自分達が嫌っている〈お局様〉と仲良くしていることで避けられるということは、淋しさよりも呆れてしまう。
 むしろ、外面だけで判断する人間と付き合いたいと思わないのが涼香だ。
 煩い噂話を聴き続けるのもうんざりする。