『そんなわけだから、良かったら予定を空けておいて。出来れば休前日の木曜日。あ、どうしても無理だったら、ギリギリでもいいから連絡ちょうだい?』

「分かった」

『悪いわね、勝手に決めて。それじゃ、また今度。おやすみなさい』

「おやすみ」

 最後の挨拶をしてからも、向こうからの電話は切れない。
 朋也は少し悩んだが、結局は自分から通話を切った。

 誓子に引き続き、涼香から電話がかかってきたことで忙しなかった。
 しかし、涼香と話をしたら、不思議と心が穏やかになっていた。

 涼香と誓子の強引さは似ているようで似ていない。
 涼香は誓子と違い、ほど良い距離感を保ってくれる。
 ましてや、男に『好き』などと軽々しく口にはしない。

「って、そもそも彼女が俺を好きなわけねえし……」

 自惚れにもほどがあると思いながら、朋也は自嘲した。

「それにしても、いつ帰ってくるんだか……」

 朋也は隣のベッドに視線を向ける。
 合コンに一番乗り気だった充のことだ。間違いなく日付が変わった頃の帰宅になるだろう。

「さて、俺は寝るぞ」

 まだ帰っていないルームメイトに告げ、朋也は瞼を閉じる。
 アルコールがいい具合に眠りを誘い、数分も経たないうちに意識が遠のいた。