案の定、歯切れの悪い返答が気になったのか、『どうしたの?』と涼香は心配そうに訊いてきた。

『高沢君、ちょっといつもと違くない?』

「そう?」

『うん、何となく変』

 いや、そういうあんたも変だよ、という台詞は、すんでのところで飲み込んだ。

「友達以外にも人がいたから、ちょっと気疲れしただけだよ。そんだけ」

『ほんとに……?』

「ほんとです」

 はっきり言いきると、涼香は、『それならいいけど』と引き下がってくれた。

『けど、あんまり無茶とかしないでよ? 高沢君って変に真面目だから心配』

「――あんたも同じこと言うんだな……」

 思わずボソリと呟くと、『え、なんか言った?』と突っ込まれてしまった。

「あ、何でもねえよ! ただのひとりごと!」

 朋也が慌てて取り繕っている向こう側で、涼香は怪訝な面持ちをしているかもしれない。
 だが、やはり問い質してこようとはしなかった。

『高沢君、明日も仕事?』

 気を遣ってくれたのか、涼香から話題を変えてくれた。

 朋也はホッと胸を撫で下ろしつつ、「仕事」と答える。

「一昨日は休みだったけど。次の休みは金曜日だな」

 訊かれてもいないのに、次の公休日を何となく伝えた。