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 寮の部屋に着いたとたん、ドッと疲れが出た。
 風呂に入る気にもなれず、着替えを済ませると、そのままベッドの上で大の字に寝転んだ。

 あのままカラオケへ流れて行った充は、まだしばらく帰って来ることはないだろう。
 一緒に帰っていたとしても、ただ煩いだけだが。

「どうすっかなあ……?」

 朋也はひとりごちながら、誓子から貰った携帯番号が書かれたメモを凝視した。

 ちょっとだけ、捨ててしまおうか、なんてことも思った。
 だが、ゴミ箱に入れようとしたとたんに罪悪感を覚え、結局は捨てず、自分の携帯電話に新たに登録までしてしまった。

 朋也の携帯番号も、誓子に教えた。
 正直、あまり気は進まなかったが、自分だけ誓子の番号を知っているのはフェアじゃないのでは、と考えたからだった。
 誓子には、『そこが真面目なのよ』と笑われてしまった。

「付き合う、かあ……」

 ポツリと朋也が漏らした瞬間だった。


 ピコピコピコ……


 ヘッドボードに置いていた携帯電話が鳴り出した。

 朋也は飛び上がらん勢いで半身を起こす。
 そして、携帯に手を伸ばし、ディスプレイに注目した。

 誓子からだと思った。
 が、違った。
 表示されていた名前は〈山辺涼香〉。
 意外といえば意外な人物だ。

 携帯は鳴りやまない。
 朋也は少し躊躇ってから通話に切り替えた。