「井上、さん……」

 ここまで話したんだし、と朋也は誓子に質問をぶつけてみた。

「俺みたいな男って、女性から見たらどんな感じ?」

 しばらく視線を逸らしていた誓子が、ようやく朋也を見上げてきた。
 真っ直ぐに見つめ、やがて、ほんのりと口元に弧を描いた。

「一般女性がどう思うかは分からないけど、私は高沢君みたいな男の人って嫌いじゃないわよ」

「気色悪いとか、鬱陶しいとか、そうは思わない?」

「まあ、ストーカー的なのはさすがに引くけど、高沢君はただ想い続けてるだけでしょ? それなら相手に迷惑なんてかけてないじゃない。それに、高沢君は真面目だから、相手にとても気を遣って自分が損してしまう感じ。違う?」

 よく、朋也の性格を見抜いている。
 ほんの少し会話を交わしただけで、そこまで相手のことを分かるものだろうか。

「どうして、そんなに俺のことが分かるんだ?」

 そのまま、素朴な疑問を投げかけた。

 誓子は相変わらず朋也をジッと見つめ、少し間を置いてから驚くべきことを口にした。

「だって、高沢君のこと好きだから」

 一瞬、何を言っているのか理解出来なかった。
 しかし、その言葉の意味を頭の中で反芻し、ようやくの思いで、「それってつまり」と続けた。

「えっと、俺を恋愛対象として見てた、ってこと……?」

「そうよ?」

「――本気で……?」

「私、これでもそうゆう冗談は言わないけど?」

 誓子は真剣な眼差しで朋也を凝視する。
 もしかしたら、「ごめん、うっそー!」などと笑い飛ばしてくれるだろうと期待していたが、全くその気配はなかった。