「――ヤな女でしょ?」

 不意に誓子が沈黙を破った。
 弾かれたように誓子に視線を移すと、誓子は朋也と目を合わせずに訥々と続けた。

「昔っからこうなのよ、私って。相手が迷惑がってるのに全然空気読めないから、しつこく詰め寄って怒られちゃう。酷い時は縁を切られたこともあった……。ほんと、この性格、いい加減治したいって思ってるんだけど……」

 そこまで言うと、あはは、と空笑いする。
 心なしか、今にも泣き出しそうな表情になっている。

「自分を変えるって難しいからな……」

 誓子を元気付けるため、というより、自分に言い聞かせるように朋也は言葉を紡いだ。

「俺も人のことを偉そうに言えねえしな。色んなことにけじめを着けるために家を出たってのに、まだズルズルと引きずってる……。女々しくてどうしようもない男だなって自分でもイヤになってくる。――ほんと、スッパリ忘れられたらどんなに気分いいか……」

 言いながら、何故、こんな話を初対面の誓子にしているのかと自分で自分に驚いていた。
 もしかしたら、アルコールが入っているせいで口が滑りやすくなってしまっているのか。

「そっか、まだ辛いんだね……」

 誓子は神妙な面持ちでポツリと口にした。
 多分、朋也が決して叶わない片想いから解放されていないことを察したのだろう。

 恥ずかしい、という感情は湧かなかった。
 むしろ、自分の本心を吐き出せたことで、燻り続けていたものが少しずつ消えてゆくような開放感があった。
 だが、何故か涼香には話せなかった。
 涼香にとって紫織は無二の親友で、逆に誓子と紫織は全くの赤の他人だから、だろうか。