◆◇◆◇
しばらく走り、飲み会に参加したメンバーの姿が完全に見えなくなってから、朋也はようやく足を止めた。
とたんに、ゼイゼイと息が切れる。
考えてみたら、高校を卒業後はロクに運動をすることもなくなっていたから、体力もだいぶ落ちている。
「トシ取ったよな、俺も……」
無意識に呟き、ふと、こんな台詞を兄の宏樹が聞いたらどんなに突っ込まれるか、と思った。
宏樹は穏やかそうで、相当痛いところを鋭く突いてくる。
優しいのに、笑顔が不思議と恐怖を煽る。
「あいつ、昔っからサドっ気が強かったしな……」
満面の笑みを見せる宏樹を思い浮かべ、朋也は何度も頭を振った。
そして、別のことを考えようと思い直したら、今度は紫織が浮かんでくる。
「ああもうっ! ダメだダメだダメだーっ!」
クソッ! と捨て台詞を吐き、自らの髪を乱暴に掻き乱した。
本当に、いつになったらけじめを着けられるのか。
そんなことを悶々と考えていた時だった。
「――大丈夫?」
すぐ側で声をかけられた。
朋也は仰天した。
誰だ、と思いながら恐る恐る声のした方に首を動かすと、カラオケに行ったはずの誓子が怪訝そうに朋也を凝視していた。
「どうしたの、急に喚き出しちゃって? もしかして酔っ払ってる……?」
「え、いや、酔っ払ってるっつうか……」
朋也はしどろもどろになりつつ、「それよりも」と話題を切り返した。
「えっと、いの、うえさんこそどうしてここに? カラオケ行ったんじゃねえの?」
朋也の問いに、誓子は小首を傾げる仕草を見せた。
「うーん、どうしよっか考えたけど、やめちゃった」
「なんで?」
「高沢君が行かないってゆうから」
誓子の言葉に、今度は朋也が首を傾げる番だった。
「俺、歌はすっげえヘッタクソだから耳が腐ると思うけど?」
「そうゆう人ほど下手じゃないと思うよ?」
「いや、他の連中も知ってっから……」
どうしてここまで自分に絡んでくるのか。
その理由がまるっきり分からない朋也は戸惑うばかりだった。
どうすべきか考え、けれどもいつまでも立ち止まっているのもどうかと思い、ゆっくりと歩き出す。
しばらく走り、飲み会に参加したメンバーの姿が完全に見えなくなってから、朋也はようやく足を止めた。
とたんに、ゼイゼイと息が切れる。
考えてみたら、高校を卒業後はロクに運動をすることもなくなっていたから、体力もだいぶ落ちている。
「トシ取ったよな、俺も……」
無意識に呟き、ふと、こんな台詞を兄の宏樹が聞いたらどんなに突っ込まれるか、と思った。
宏樹は穏やかそうで、相当痛いところを鋭く突いてくる。
優しいのに、笑顔が不思議と恐怖を煽る。
「あいつ、昔っからサドっ気が強かったしな……」
満面の笑みを見せる宏樹を思い浮かべ、朋也は何度も頭を振った。
そして、別のことを考えようと思い直したら、今度は紫織が浮かんでくる。
「ああもうっ! ダメだダメだダメだーっ!」
クソッ! と捨て台詞を吐き、自らの髪を乱暴に掻き乱した。
本当に、いつになったらけじめを着けられるのか。
そんなことを悶々と考えていた時だった。
「――大丈夫?」
すぐ側で声をかけられた。
朋也は仰天した。
誰だ、と思いながら恐る恐る声のした方に首を動かすと、カラオケに行ったはずの誓子が怪訝そうに朋也を凝視していた。
「どうしたの、急に喚き出しちゃって? もしかして酔っ払ってる……?」
「え、いや、酔っ払ってるっつうか……」
朋也はしどろもどろになりつつ、「それよりも」と話題を切り返した。
「えっと、いの、うえさんこそどうしてここに? カラオケ行ったんじゃねえの?」
朋也の問いに、誓子は小首を傾げる仕草を見せた。
「うーん、どうしよっか考えたけど、やめちゃった」
「なんで?」
「高沢君が行かないってゆうから」
誓子の言葉に、今度は朋也が首を傾げる番だった。
「俺、歌はすっげえヘッタクソだから耳が腐ると思うけど?」
「そうゆう人ほど下手じゃないと思うよ?」
「いや、他の連中も知ってっから……」
どうしてここまで自分に絡んでくるのか。
その理由がまるっきり分からない朋也は戸惑うばかりだった。
どうすべきか考え、けれどもいつまでも立ち止まっているのもどうかと思い、ゆっくりと歩き出す。