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 合コンという名の飲み会は二時間で終わった。
 だが、今度はカラオケに行きたいと数人が言い出し、そのまま自然に全員がカラオケ店に向けて歩き出す。

 朋也は悩んだ。正直、人前で歌うのは苦手だし、何より一次会だけで疲労が溜まっている。
 仕事でも充分疲れるが、気疲れはその比ではない。

「あ、あのさ……」

 場の空気を壊すのを覚悟で、朋也は意を決して切り出した。

「わりいけど、俺先に帰るわ。明日早いし……」

 案の定、白けた雰囲気となった。
 やばいな、と思いつつ、かと言って、一度出てしまった言葉は取り消しが利かない。

「ほんっとにごめん! じゃな!」

 逃げるが勝ち、とばかりに、朋也は素早く踵を返し、脱兎のごとくその場を去った。
 もう、これから先のことは知ったことじゃない。
 女子には完全に嫌われただろうが、そんなのはどうでもいい。
 むしろ、最初から合コンなんて参加したいとは思っていなかったのだから。