「でも、そうゆう高沢君もいいよ」

 朋也と充、ふたりのやり取りを見守っていた女子が、頬杖を突きながら訥々と続けた。

「つまり、高沢君ってちょっと不器用なんでしょ? クールに振る舞ってしまう人に多い気がするし。私、そうゆうギャップって好きよ」

 深い意味はなかったと思う。
 しかし、恥ずかしげもなく、サラリと『好き』などと口に出してしまうのは如何なものだろうか。
 これには朋也だけではなく、充までも固まってしまった。

「あれ、私なんか変なこと言った?」

 呆然としている男ふたりに気付き、女子が首を傾げながら訊いてくる。

「あ、いやあ、別になんも変なこと言ってねえよ。なあ?」

 充に振られた朋也は、我に返って、「あ、ああ」と同意する。
 喉の渇きも急に覚え、残っていたビールを一気に飲み干した。

「俺、ちょっとトイレ」

 充が思い立ったように腰を上げた。

 残された朋也は、近くにあったピッチャーに手を伸ばしかけた。

「手酌なんてしたら出世しないわよ?」

 朋也よりも先に、女子がそれを取り上げた。
 そして、朋也に向けてそれを傾けてくる。

 朋也が無言でグラスを持つと、女子は上手にビールを注いでゆく。