「ねえねえ高沢君、私達のこと憶えてる?」

 女子の中でも一番積極性のありそうな人物が、身を乗り出す勢いで朋也に訊ねてくる。

 朋也は温くなったビールをちびちびと流し込みながら、その女子を一瞥した。

「まあ、ちょっとだけ……」

 つい、馬鹿正直に答えてしまった。

 だが、その女子は気分を害した様子はなく、むしろ、「やっぱあんまり憶えてなかったんだねえ!」とケラケラ笑っていた。

「高沢君ってさ、すっごくクールで私ら女に全く関心なさそうだったもん。けど、そうゆうトコが結構良かったんだけど」

「く、クール……?」

「うん。若いのにちょっと大人びた印象があった」

 マジかよ、と思っていたら、隣から、ククク、と忍び笑いが聴こえてきた。
 笑い声の主は考えるまでもない、充だ。

(こいつ……!)

 朋也がキッと睨み付けるも、目が合った充はさらにツボにはまったらしく、とうとう声を上げて爆笑した。

「いやいやいや! そりゃねえわ! こいつ大人ぶってるようだけど中身は純情少年そのものだぜ? ちょっとからかうとムキになるから面白いんだこれが!」

 言いながら、またさらにヒイヒイと笑い続ける。
 確かに言っていることは的を射ているが、完全に馬鹿にされているとしか思えないから、納得するどころか苛立ちが募る。

 朋也は拳を握り締めた。
 一発ぶん殴ってやろうかこいつ、と思ったが、何度も深呼吸を繰り返し、何とか心を落ち着かせた。