(ただでさえめんどくせえのに、まためんどくせえ……)

 そう思っている間に、目的の居酒屋に到着した。
 充が先頭になって引き戸を開けると、ほどなくしてそこの従業員が駆け寄ってきた。

 充はそこで予約していた人物の代表名を告げ、従業員は復唱してからふたりをその場所まで案内してくれる。
 通された広めの個室には、男子三人と女子五人が先に待機していた。

「おっせーぞ!」

 幹事と思しき男子が、挨拶もそこそこにふたりに言ってくる。
 何となく、すでに出来上がっている様子だ。

「お前、先に飲んじまったのか……?」

 充が問うと、幹事男子は「ちょーっとだけな」と答える。いや、絶対ちょっとじゃねえだろ、と朋也は心の中で突っ込みを入れた。

「ま、これで無事全員揃ったし、そろそろ始めようか?」

 ピッチャーで注文していたビールをそれぞれ注ぎ、乾杯の音頭とともに一斉に飲み始める。
 朋也も充分いける口だから、なみなみに注がれたビールを一気に半分以上飲み干した。

 いったい、どんな面子なのだろうと思っていたら、何のことはない。
 女子は全員、同じ会社の人事や経理、総務に所属する人間だった。
 しかも同期だから、何となくではあるが、入社時の研修期間中に見たことがあるような気がする。
 ただ、わりと大きめな会社だから、よほどのことがない限りは、同じ部署の人間と関わる機会は非常に少ない。
 だからこそ、彼女達の顔を見ても、〈何となく〉でしか思い出せない。
 元々、朋也が紫織以外の女子に関心を持たないからというのもあるにはあるのだが。