クールダウンしてきたところで、紫織が、「そろそろ寝る?」と言ってきた。

「まだちょっと早い気もするけど」

 涼香と紫織は、同時に壁時計に視線を向ける。
 十時を回ったばかり。
 ちょっとどころか、普段の涼香は今頃が一番フィーバーしている。

「眠くなった?」

 紫織に訊くと、「全然」と返ってくる。

「てゆうか、さっきのですっかり目が覚めちゃったし」

「あらあら、紫織ちゃんには刺激が強過ぎましたな」

「――刺激が強いとかどうとかって以前の話でしょ……」

 紫織は盛大に溜め息を漏らし、ベッドに潜り込んだ。
 結局寝てしまうのか、と思ったが、違った。

「――涼香」

 肩まですっぽりと布団を被った紫織が、ベッドの下にいる涼香を見下ろす。

 涼香は床に直に敷かれた布団の上で胡座をかきながら、黙って紫織に視線を注いだ。

 そのまま沈黙が流れた。
 涼香は紫織が何かを言うのを待ち、紫織は紫織で、相変わらず涼香を見つめ続ける。

 時計の針の音が煩いほどにカチコチと部屋中に響いている。

 このまま、互いに口を開くことなく眠りに就いてしまうのだろうか。
 そう思っていた時だった。