「――ごめん……」

 気まずい思いで頭を下げる朋也に、涼香は、「いいのよお」と笑いながら返してきた。

「さっきも言ったじゃない。取っ付きにくい印象がある、って。だからそんなのいちいち気にしてない。それに何より、こうして〈ちょっと怖い〉私とご飯食べてくれてるじゃない」

「――気にしてるじゃねえか……」

 項垂れる朋也を前に、涼香は愉快そうに声を出して笑う。
 改めて考えると、何をしても、何を言っても、朋也は涼香に笑われてしまうらしい。

(いいけどさ、別に……)

 朋也はひっそりと溜め息を漏らした。

 しかし、こうしてずっと、笑っている涼香を見ていると、ほんの一瞬でも暗い表情を見せたことが嘘のように思えてくる。
 もしかしたら、朋也の見間違いだったのかもしれない。

(やっぱ、兄貴と同類っつうことか……)

 食事を再開した涼香をチラリと一瞥してから、朋也もまた、残りのパスタを平らげていった。

[第二話-End]