(そういや、兄貴にも似てるんだよな、彼女)

 朋也はふと思った。
 と言っても、朋也と宏樹は二人兄弟だから、涼香のところとはまた違うのだが。
 いや、紫織も兄妹同然に育ったから、家庭環境は似通っているだろうか。

(けど、女ばっかじゃ違うか……)

 心の中でひとりで突っ込む。

「――大丈夫?」

 涼香が怪訝そうに訊ねてきた。

「さっきから様子が変だけど? 急に気難しい顔になったり」

「え、いや、そんなことは……」

 表情の変化を観察されていたことを知った朋也は慌てふためく。

 その様子を、涼香はさも面白そうに眺めていた。

「いいのいいの。人間、素直が一番だもの。紫織もすっごく分かりやすい子だし。素直に自分を出せるのってほんといいことだと思うわよ?」

「そ、そうか……?」

「そう」

 涼香は大きく首を縦に動かしてから、サラダを咀嚼し、それを水で流し込んだ。

「私は知っての通り、取っ付きにくい印象があるみたいだしね。そうそう、高沢君にも、初めてまともに話した時に『ちょっと怖い』って言われたことあったっけ」

「――え、俺そんなこと言った……?」

「うん。言われちゃった」

 おどけた調子で返されたものの、過去にそんな失言をしてしまったことを知った朋也は頭を抱えたくなった。
 それ以前に、すっかり忘れていたことに問題があるが。