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 涼香に連れて来られたのは、大通りから脇道に入った場所にあるパスタ専門店だった。
 店構えを見るとちょっと敷居が高そうで、とてもひとりでは入れなさそうな雰囲気がある。

「ここ、意外とリーズナブルで美味しいのよ」

 涼香は嬉しそうに言いながら、店の扉を開く。

 朋也も続いて入ると、チーズの濃厚な香りを感じた。
 さすがはパスタ専門店、と単純なことを真っ先に思った。

 店内は予想はしていたが、女性客で占められている。
 男も多少はいたものの、決まって女性と一緒だ。
 ふたり一組で席に着いているから、恐らくカップルなのだろう。

(つうか、俺らってどんな風に見られてるんだろ……)

 そんなことを考えている朋也をよそに、涼香は慣れた様子で空いた席を見付けて朋也を促す。
 わりと奥に面した場所だ。

 席に落ち着いたタイミングで、店のロゴ入りのエプロンを身に着けた女性店員が、水の入ったグラスとメニューを持ってきた。

「ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい」

 そう言い残し、女性店員は一度席を離れる。

「はい、どうぞ」

 涼香は早速、メニューを広げた。
 入り口前で言っていた通り、確かに思ったより値段はどれも手頃だ。