「けど、そいつらに俺の何が分かるってんだ? お前にしろ、ただ面白がってるだけだろ? 紫織のことはデリケートなことなんだ。いちいち詮索されて堪るか!」

 言いきったのと同時に、朋也は空になった缶をグシャリと潰した。
 それはテーブルの上に戻されたが、惨めな姿に変貌させられた缶は、辛うじて立っているものの、今にも崩れ落ちそうなほどの脆さを感じさせる。

 と、その時だった。
 部屋に備え付けられている内線電話が鳴り響いた。

「おっ、ピザ来たんだな?」

 憂鬱になっている朋也とは対照的に、充は嬉々として腰を上げ、受話器を取る。

「あ、はい。わっかりましたー! すぐ行きまーす!」

 異様なまでのテンションで応対した充は、受話器を置いて朋也の方を振り返った。

「そんじゃ、俺はピザ取って来るから。高沢君はゆっくりしてなさいな」

 財布を持ちながら朋也に挨拶する充が気色悪い。
 わざとなのは分かっているが、それでも、女言葉を使われるのはあまりいい気分になれない。
 とはいえ、また金を払わせてしまう手前、邪険には扱えない。

「戻ったら俺も払うから」

 充が出ていく間際、朋也は告げた。

 充はわずかに目を見開き、けれどもすぐに笑顔を取り戻した。

「次にお願いするわ」

 また、わざとオカマのような口調で返してきた充は、今度こそ部屋を出た。

「しょうがねえ奴……」

 朋也はドアを睨んだまま、溜め息と同時に苦笑いした。