「よし、注文完了!」

 電話を終えたタイミングで、ちょうど部屋の前に着いた。
 充の手は、携帯とチラシで両方とも塞がっていたから、必然的に朋也が鍵を開けることとなった。

 ドアも開け、電気も点けると、部屋の中がいっぺんに明るさを取り戻す。
 室内は男のふたり部屋のわりには整然としている。どちらも極端な綺麗好きというわけでもないが、無駄に物を増やして散らかすこともしない。掃除も分担して、そこそこしている。

「やっぱ自分の場所が落ち着くねえ」

 そう言いながら、充は自分専用のスペースで仕事着から部屋着に着替える。

 朋也も少しばかりそれを見届けてから、紫織からの手紙をベッドに備え付けの引き出しにしまい込み、同様に着替えを始めた。

 互いに着替えが済むと、まずは充が共有している冷蔵庫の前へ行き、そこから350ミリリットルのビール缶を二本取り出す。
 そして、ローテーブルの上に置くと、「こっち来いや」と朋也を手招きしてきた。

 朋也は言われるがまま、テーブルの前に来てそのまま胡座をかいた。

「っと、空きっ腹に飲むのは良くねえな。ちょっとつまみ探すか」

 ようやく落ち着くかと思いきや、充はよく動く。

(そういえばこいつ、これで美味いメシをよく作るんだよな)

 充専用の戸棚を漁っている充の背中を凝視しつつ、朋也は思った。

 料理なんてまともに出来ない朋也とは対照的に、充は休みの日はまめに料理をしている。
 ただ、仕事のある日は疲れが勝ってしまい、作る気力が湧かないとよく零している。
 実際、先ほどもピザをデリバリーしたぐらいだ。
 ただ、朋也だったら、休みであろうとも料理なんて面倒だから、レトルトを温めるか、インスタントラーメンを茹でるぐらいで済ませてしまう。