「おい、待て待て!」

 充が慌てたように追って来るも、当然、振り返りもしなければ立ち止まる気もない。
 だが、あっという間に隣に並び、結局、一緒に階段を昇って部屋へ向かうハメになった。
 どのみち、朋也と充は同室だから、最初から逃げることなど無理だったのだが。

「とりあえず、部屋の冷蔵庫にはビールのストックがあったな」

 金魚の糞のようにピッタリ並びながら、充が言う。

「つまみも確かあったな。あ、メシはどうする? ピザでも頼んどく?」

「――お前の好きにすりゃいいだろ」

 抵抗する気力もなくなった朋也は、適当に返事をする。

「ほんと釣れないねえ」

 充は苦笑いすると、「ま、それがおもしれえけど」とニヤリとしながら漏らした。

「『おもしれえ』とかわけ分かんねえわ」

「そこが面白いのよ、高沢君は」

 また、オカマのような言葉遣いをわざとする。
 いや、もしかしたら、これが本性なんじゃないか、などと朋也は思わず勘ぐってしまった。

「んじゃ、部屋に行ったらピザ屋に電話すっか」

 そう言いながら、階段を昇りきってから早速、自分の携帯電話をポケット取り出してピザ屋に電話をする。
 しかも、チラシも反対のポケットから引き出し、それを見ながらテキパキと注文を言う。
 これが仕事だったら感心するところだが。