『よく分かんないけど、男同士で気兼ねなく飲みたいって気持ちは分からなくもないかも』

「紫織は下戸だしな」

『確かに、あの子を酒飲みの場に引っ張り込むのは酷だわ!』

 また、いつもの涼香に戻った。
 ゲラゲラと豪快に笑い、ひとしきり笑って気が済んだのか、『あ、そろそろ切るわ』と言ってきた。

『ごめんね。私から電話したくせに』

「いいよ。山辺さんは明日も仕事なんだろ?」

『ええ、私の仕事はカレンダー通りですから』

 わざとらしく敬語を使う涼香に、思わず苦笑いしてしまう。

「そんじゃ、ゆっくり休んで」

『ありがと。高沢君もいい休日を』

「じゃあ、おやすみ」

『おやすみ』

 通話を切ったとたん、一気に全身から力が抜けた。
 同時に、酔いも覚めた。