コラム「初期王朝についてのメモ」

 中国大陸で最初の名前が残っている王朝は夏・殷・周の三代だけれども、どうやら神話的に美化されている面もある(儒教思想で模範とされたため、道徳的に理想化して会釈された面がある)。
 一説では夏は実際の直接支配エリアは九州くらいの規模でしかなく、どうやら北方系(北狄?ほくてき、に近い)らしい(自分の記憶違いの可能性もあるが)。
 また殷(本来は「商」と言ったようだが)は海洋的な東方の民族(東夷に近い)のようである。周はどうも内陸系のようだが(一応は中国本体部分の全体の盟主くらいにはなっていたようだ)、白川静の「中国の神話」(中公文庫)や「漢字」(岩波新書)などを見ると詳しく書いてあった覚えがある。

 春秋戦国時代に中国北部の国で「胡服」(こふく)、つまり北方民族の服装を採用する話があるが、あるいは血筋や習俗が元から似ていたのではないだろうか?
 さらに後の時代の陶淵明が「犬の子」(犬を神聖視する野蛮人の家系)などと揶揄されたそうだが、それは田舎者くらいのいみでしかあるまい(日本の土蜘蛛とか隼人や蝦夷と似たようなものか?)。おそらく「文明開化しているかどうか」だけで、血筋としてはあまりかわらなかったのでないか。
 フツギやジョカなどの中国の龍神も、本来は国内の苗(ミャオ)族の神が起源という話があるくらいで、実は「漢民族」というのは「中華文明の意識」を持った「(彼らが有史以来に見下して馬鹿にしてきた)四方蛮族の同類の混血集合体」なのである。
 これら事情は日本でも、近畿の大和と東日本の蝦夷(えみし)や九州の隼人や各地の土蜘蛛、アイヌ・琉球などが、基本的に血族で同類なのと同じことである。ただ中国の場合には規模が大きすぎるために地方差が激しく、主要な中国語だけで北京語(公用語)・上海語・客家語などで五種類もあり(もはや方言という以上の差がある?)、ダイナミックなカオスで収集がつかなくなっている。しばしば「規模の不経済」に陥りがちな上、ウイグルやチベットなどは人権問題にまでなっている。おそらくは北宋南宋の時期のように適当に区分けして、内政内需を充実させた方が上手くいくのでないかとも思われる(現実は厳しいだろうし、あまりにもこれまでが酷すぎて致命傷かもしれないが)。おそらく最初の本格的な統一王朝の前漢後漢くらいが、まともに国家運営できる規模の限界だったのではないかと思われる。

 なお少々余談ではあるが、共産党がチベットを虐待しているのは、単なる領土欲だけでなく、水源確保だけでなく、易姓革命(を幇助すること)を恐れているのかも知れない(周王朝の易姓革命は羌=当時のチベット遊牧民に助けられていた)。
 なおウイグルの綿花プランテーションの巨大利益についても、この数ヶ月くらいにとうとう槍玉に挙がっているらしい。中国の国内経済崩壊などのことも、虚言隠蔽マスコミは全くろくに報道せず、嘘と誤魔化しばかり垂れ流しているようだ。