悠斗が必死に中にいるだろう2人を探している最中、麗花がハッキリと倉庫の様子が見える写真を見せようとしたところで山城先輩がひょいと写真を取り上げる。

「どれどれ。おっ、中央にメガネをかけた真面目そうな男がおるやろ?あれが藤永、blasting crewのボス。そんな感じに見えんよね、見た目通り武闘派では無いけどその分頭が切れるんよねえ。」

そこには藤永と幹部連中、他構成員が写っている。幹部クラスの着ているジャケットには胸元に役職が書かれているのが見えた、藤永の隣にいる男にはsecretary(秘書)と。

「ちなみに藤永は高校生。大学生もメンバーにいながら統制出来ているんだからあいつも凄いよ。」

「けど、見た感じ恭弥と采香はいないっすね。」

麗花に隅々まで撮って貰ったが中に2人の姿はない。かといって2人を探そうとしているメンバーも居ない。想像よりも組織の雰囲気緩いのだろうか。

「普通集会にはメンバー全員が集合するはずなんだけどな…時間管理厳しいし。前潜入したときは遅刻した奴ら土下座させられていたぜ?」

先輩はスマホを取り出しスケジュールを確認している、このイレギュラーな状況を和希さんにも調べさせる為電話を掛けようとしていた。

「和希さん、一部居るはずのメンバーが集会にいないんすよね。今日何か予定とか入ってましたっけ?ちょっと調べとってもらっていいっすか?」

「一応もう調べとったんやけどさ、今日は集会意外特に予定無いはずなんよね。調べが甘かったかな?」

「あとはこっちで集会の内容聞いてみます、今日は早めに撤退もありっすね。」

すると倉庫内は突然静かになり壇上の方から声が聞こえ始めた、集会の本題に入るようだ。

「今から定例報告会を始める、各幹部は先週から今日までの制圧状況を説明しろ。」

藤永の隣にいる幹部が司会となり話し始めた。幹部クラスと各傘下組織のボスがステージ前に集められている。

「竹下支部、大橋エリアにて交戦。明日も仕掛ける予定です。」

初めて日常生活の裏で起きている事実を耳にした2人は動揺していた。話題に上がってくるのは普段遊びに出かけているような地域ばかりだった。一通り幹部クラスの説明が終わり、傘下組織の一人が説明を始めるところだった。

「申し訳ございません、今到着しました。」

そこに現れたのは恭弥と采香を含めた十数人のメンバーだった。全員胸にsucide attackと書かれていた。

「そういうことねー、あの部隊なら情報入手が遅れるのも無理ないか。しかも、よりによってあの2人が最前線部隊兼組織のナンバー2とはね、藤永の奴面白いことするやん。」

幹部クラスとまでは思っていなかった悠斗は息が詰まった。

「そういえばsucide?って胸に書かれている人達、ロケの日西新というか天神にもいっぱい見たよ。」

「あーそうそう。知ってると思うけど中央区ってさ、どこのチームも抑えていない地域なんだよね。市の中心で商業地域でもあるし誰もが抑えたいところなんだけどさ。だからこそ各チームがしのぎを削っている、それをblasting crewで担ってるのがあの2人よ。」

「つまり1番危険な事やらされてるチームってことっすか。」

「そういうこと。どうだ悠斗に麗花ちゃん、この状況、かつての友人の現実を受け入れられる?」

直ぐに先輩の問いに応えられなかった。

「恭弥、采香。計画だと12月には親不孝エリアを抑えることになっているが、出来るか?」

「予定計画に対して遅れはありますが、作戦に必要な物、戦略は既に練ってあります。」

「タイミングさえ良ければいつでも出来ますよ、各幹部にも協力して頂けねばなりませんが。」

「それなら計画より早めろ、その後の計画の準備方がこのままだと大幅に遅れる可能性がある。全幹部に言うがペースを上げろ、他組織の動向が近頃見られる。先を越される前にやれ。」

藤永から指示が飛ぶ、確かに指示命令系統には特化しているようだ。

「あの男は厳しいねぇ、まあ適度に気を引き締めさせて管理出来ないとトップとして立てないだろうし。」

「風格はありますよね、あの連中数百人を束ねるとなるとカリスマ性もいるんすかね。いや、あっ、しまっ…ああっ!」

ガシャーン!!

気を緩んだ拍子に悠斗がフェンスから落ちて下にある瓶ケースを思いっきり倒してしまった。その衝撃で先輩と麗花も落ちた。

「いってー、このままだと気付かれるしはよ逃げよ。」

「おい、誰か見ているのか、お前ら探せ!!」

一斉にblasting crewのメンバーが倉庫から出てくる。3人が裏手に回ろうとしたところ藤永に気付かれた。

「待て、仁!何でお前がいる!なめやがって」

逃げようと倉庫の裏を回ったがすぐに藤永に追いつかれた。

「やばいねー、もうバレとるやん。とりあえず和希さんに連絡しとこ。」

何故か藤永が先輩の名前を知ってる、何度か潜入した際に調べあげられたのだろうか。逃げる間も無く周りの構成員はそれぞれ武器を持ち身構えてこちらを包囲しようとしていた。しかし先輩は気にせずメンバーの前まで丸腰で歩いていった。

「こんなペースで侵攻されても困るんよねー、俺達にだって計画はあるんだからさ。あ、そこの2人はメンバーじゃないよ、暇つぶしに連れて来ただけ。残りの準備期間、何をするか知らないけど、俺だってやるときはやるけんね。覚悟しとき。」

「どういうことっすか先輩…」

言いかけているところにちょうど待機していた和希さんが迎えに来た。

「タイミング最高!じゃあね!」

「追いかけろ!」

presidentによる合図とともに倉庫前のメンバー達がバイク、車のエンジンを掛け、走り出す。

「和希さん、とりあえず南区まで全開ね。2人共安心して、あいつら区域外までは追ってこんけんさ。」

先輩達は慣れた様子だ、バイクの轟音と車が打つける音、和希さんの運転に麗花は怯え切っている。

「うちらの場所まで行こっか、どうせだし。」

ガシャ!ガン!

奴等は容赦なく車を当ててくる。

「悠斗、これとりあえず彼奴らに投げてくれん?」

先輩が指差したのは車内に置いてあった石だ。他に武器になりそうな物はない為、仕方無く応戦する。

「原始的だけどこういう時の為に置いてあるんよー、意外と使えるでしょ?この通りで銃を使うのはマズいしさ。」

「てか相手何人いるんすかマジで!もう車もボッコボコですよ!」

「もうイヤダイヤダイヤダイヤダ!!」

麗花は遂に耐えられなくなり絶叫している。

「あともう少しやけん頑張り!」

あまりの攻撃に2人のメンタルが潰れかかる中、和希さんのドライビングテクニックで上手く周囲の車切り抜け、ようやく野多目を過ぎた当たりでblasting crewは追いかけてこなくなった。