席替えをして以来、雨宮はちょくちょく俺からノートを借りるようになった。

 雨宮は、スマホで撮った黒板の写真を見ながらノートに書き起こすのが嫌いらしい。

「指先でいちいち画面を拡大しなきゃいけないのが手間なんだよね」といつだか不満げに言っていた。それ故にクラスメイトからノートを借りて写すのが雨宮の主流スタイルなのだそうだ。

 だから俺自身、口ではぶつくさ言いながらも、雨宮にノートを貸すこと自体にはすでに慣れ始めていた。 

 ただ、疑問ではあった。本来ならおそらく仲の良い女子から借りていたはずなのに、ここ最近はどうしてその矛先が俺に向けられているのか。

 単純に、席が近いから。それだけの理由なのかもしれないけれど、妙に気になった。

 気になるならば直接聞いてみるのが1番だ。あくまで他愛のない会話の延長線上として、俺はその疑問を雨宮に投げた。