すると雨宮が俺のノートを勝手に手に取り、くるりとその向きを変えて「ええー…、書けてない所大体同じじゃん…」とぶつぶつ文句を言い始めた。

 知るかよ、と内心思いながら「黒板撮れば?今ならまだ間に合うだろ」と例の手法を提案した。

「私がそれ嫌なの知ってるでしょ。ていうか森下は?撮らないの?」

「あー、後で誰かのノート借りて写すわ。先週の分とかも書いてない所あるし」

「じゃあ写し終わったら森下のノート貸して」

「何でだよ、自分で誰かから借りればいいだろ。何で俺待ちなんだよ」

 少し言い過ぎたか、とも一瞬思ったけれど雨宮は特に気にした様子もなく、「雨宮専属のノート係でしょ、森下は。忘れたの?」とにっこり笑いながら、俺にとっては全く心当たりのないことをさらっと言った。