そんな他愛のない会話をしつつ教室前方に目をやると、日直当番がせっせと黒板の文字を消しているのが見えた。

 授業中の居眠りに関してさらに補足すると、言うまでもないことかもしれないが別に窓際限定というわけでもない。昼飯を食べた後に受ける授業なんていうものは、基本的に教室のどこに座っていようが眠い。

 よって俺と雨宮以外にも寝ているクラスメイトなんてあちこちにいる。

 そんな奴らは大抵慌てて「あーちょっと待って」と日直当番を引き留めて、黒板をスマホのカメラで撮り始める。寝ている間に書き写せなかった板書を、後でノートに書き足すためだ。

 俺自身もよくやる手法だけれど、今日はとにかく眠くて写真を撮るという何てことのない動作すら億劫に感じてしまった。机の上に広げられたノートには、授業冒頭の内容しか書き写せていない。