何味の?という言葉は、喉元で止まってしまった。何をこんなに恐れているんだろうなと、自分でもだんだん呆れてくる。

 もう、いいや。追究するのは、やめよう。

 たった今貰ったばかりの苺味の飴玉を、口の中に放り込む。

 怒ってもいないしイライラもしていないけれど、ただただ気が抜けた。一気に広がった苺の強い香りも相まって、自分が負けたことを自覚させられる。何かと勝負していたわけでもないのに、何故だか胸の中に残る敗北感。

 でも、嫌な気持ちではなかった。負けというより、許しだろうか。

「私ももう1個舐めちゃおっかなー」

 そう言って雨宮が巾着袋から取り出したのは、またも赤かった。

 もうやめてくれよ、と俺は頭を抱えたくなる。これ以上の追究はやめておくと決めた矢先にそれはない。俺の気も知らないで、本当にこいつはどこまでも我が道を行く。

「んふふ、美味しい」

「何笑ってんだよ気持ち悪い」

「ひっど。森下までそういう発言するなら、金輪際飴あげないよ」