俺はまた1つ学んだ。学んだというか、誓った。雨宮の予測不能の言動を、他の人間があれこれ勝手に想像なんかするもんじゃない。そうだ、二度とするもんか。

「雨宮」

「ん?何?」

「飴ちょうだい」

 投げやりに言ったその言葉に、雨宮はほんの一瞬驚いた様子を見せたけれど、それでもすんなり飴玉をくれた。そして、それはやっぱり苺味だった。

「…なるほど。イライラしてる時って糖分足りてないとか言うもんね。飴を催促されるのは初めてだったからちょっとびっくりしちゃった」

「別にイライラしてねえよ。…あれなの?雨宮からしたら、俺って孫的存在なの?」

「……は?」

「んで、雨宮がばあちゃんなの?やっぱり老人なわけ?」

「待って待って、全然話が見えないんだけど」

「こいつに聞いてくれよ」

 後ろの席を振り返り、またも投げやりに言う。「え、こいつって…ここの席?葉田っちのこと?何で今葉田っちが出てくるの?」と雨宮はますます混乱しているようだった。

「いちいち飴を渡してくるのが老人みたいだって言ってたよ」

「そんなこと言ってたの?失礼な。出身中学が同じっていう希少生物だけどあいつにはもうあげてやんない」

「飴?」

「そう」