ちなみに昨日の書道の授業で俺が描いていたのはトトロじゃなくてピカチュウだ。ただ真面目に授業を受けていないのは事実だから、特に何も言い返せない。

 けれど、それってわざわざ今この状況で話すことなんだろうか。正直、かなり紛らわしい。何かを勘違いしたっておかしくないだろう?勝手な想像だってそりゃしてしまう。だから俺は悪くない。こんな時まで相変わらずのマイペースぶりを炸裂させる雨宮が悪い。

「ねえ、さっきから何なの?その気の抜けた返事は」

 誰のせいでこんなに脱力的な気持ちになっていると思ってるんだ。お前のせいだぞ。そう言ってやりたかったけれどぐっと堪えた。

「…書道つまんねえんだもん。大体、芸術選択の授業、俺の第1希望は美術だったんだよ。そりゃモチベーションも上がんねえよ。落書きだってするっつーの」

「書道の授業って人気ないから、第2希望を書道で提出した人は、第1よりもそっちが優先されちゃったらしいよ」

「何だそれ…だったら第2希望、音楽にすれば良かった」

「まあまあ、とにかくさ。せっかく書道の授業取ってるのに、今のままだと宝の持ち腐れだよ」

「…あっそ」

「お世辞とかじゃないからね?森下、ほんとに字上手いよ」

「はいはいどうもありがとうございます」

「ねえ、なんか怒ってる?」