ノートに落ちた髪を耳にかけながら、雨宮が屈託のない笑顔を向けてくる。

 だから、何でお前はすぐそういう顔をするんだ。内心、俺はどうしたらいいのか分からなくなってしまうんだ。

 当の本人に悪意なんていうものはもちろん無いだろう。俺が密かに困っているなんて、夢にも思ってないはずだ。

 というようなことを突き詰めて考えていくと、最終的に辿り着くのは雨宮への恨みがましさ。

 くそ、と改めて思う。何で飴玉1つでこんな気持ちにならないといけないんだ。

 雨宮も俺もさらっと「好き」とかいう言葉を口にしたけれど、もちろんその対象は例の物。苺味の飴玉だ。

 なんて、言うまでもないことなのかもしれない。でも大事な部分は強調しておくべきだし、変な誤解が生まれでもしたら大変だ。

 誰に向けての言い訳なのか釈明なのかもはやよく分かんねえな、と心の中で思わずぼやきたくなる。

「…あのさ、森下」

「ん?」

「ちょっと、言いたいことあるんだけど」