「まあ正確にはもう溶けて無くなっちゃったけどね。でも舐め終わった後もすごく残るんだよね、味とか、匂いとかも」 

「いつも俺にくれるやつ?」

「そうそう。あの苺の飴ね、私すっごい好きなの」

 へえ、とか、ふうん、とか適当な返事をしながら、雨宮の隣の空いている席を拝借して、そこに腰を下ろした。なるべく自然な動作で。

 そう、不自然さは生み出したくなかった。その苺の飴って俺以外にもあげてんの?なんていうド直球な質問は、やっぱり不自然に値してしまうのだろうか。

 でも、ここまで来たらもう思い切って聞いてしまいたい。曖昧なままでいい、そんな風に今までは思っていたけれど、そんなのは嘘だ。嘘と言うべきか、逃げと言うべきか。

「…俺もあれ好き」

「ほんと?なら良かった」