俺は心の中でぎょっとして、でもそれをなるべく表情には出さないようにして、改めて冷静に尋ねた。

「いつも、レモン?」

「だろ?バリエーション増やしたほうが良さそうな気もするけど、そこら辺は不平等が生まれないようにとかって意識でもしてんのかな。それか老人感じゃなくてあくまでJKのフレッシュ感を出すために、レモンで統一?」

「…なんかとんちんかんな考察になっていってるような気が」

「俺も自分で言っててよく分かんねえわ」

 とりあえずこれな、とノートを手渡された所でなんとなく会話もフェードアウトしてしまった。男同士で話す特に意味のない会話なんて、大抵そんなものだ。

 今回に限り、その内容自体は俺にとって重要案件ではあったけれど、それはあくまで俺自身の問題だ。

 とにかく、1つの疑惑がよりはっきりとしたものになった。

 雨宮が人にあげる飴は、レモン味。でも俺は、レモン味を一度も貰ったことがない。苺味しか、貰ったことがない。

 その差というか理由というか、それって一体何なんだ?