またある時は、教室で雨宮がひたすら謝っている姿を見かけた。その相手は、雨宮と同じ図書委員の男子。

 そいつに後から聞いた話だが、図書室のカウンター当番の仕事を、放課後雨宮は完全にすっぽかして帰ってしまったらしい。

「ほんっ……とうにごめん!お詫びにこれあげる!」と言いながら手渡したのはやっぱり飴玉。感謝だけじゃなく、それは謝罪の場面でも登場可能のようだった。

 あいつ謝る気無くね?とその男子が後々俺にぼやいてきた。ぼやきながら、口の中をもぞもぞ動かしていた。その時僅かに香ったのは、すっきりとした柑橘系の匂いだった。