「広綱殿は鋭いですな。はて、妹御を結界の中に入れ、妖気を放つものを退け。妹御は、妖に狙われとるということですかい」

 広綱は黙って二人を見つめ、ふっと息をつくと、離れに視線を移した。

「父上より妹のことを聞いたと申したな。父上がおぬしらにどう話したかは知らぬが、あのお人は常人以上に闇を恐れられる。故に私のことも疎んじておられる。その分、妹を愛でておられたが……」

「妹御は常のお人ですか」

 一八の言葉に、広綱は冷笑を浮かべた。

「常人の父上には、そう見えていたであろ。私が目に見える術を使う分、余計にな。馬鹿なお人だ。私と妹は、同時に生まれた。陰陽とは、字の如く陰と陽。性で言うなら女と男だ。そこへきて我ら兄妹の誕生。我らの系譜を辿れば、どういうことかわかりそうなものだ」

「妹御も力がありなんしたか。広綱様が目に見える外側の力。妹後は、内側の力ですな」

「妖気を吸い取るが故に、竜雲図に吸い寄せられたわけじゃな」

 一八と四郎が、顔を合わせて頷いた。

「したが、妹御には多少荷が重すぎたようじゃの」

 四郎が、ひたと広綱を見据えて言う。表情のない人形のような顔に、黒い瞳だけが妙に光って見える。闇そのもののような瞳だ。