「右京!」

 広綱の声に、右京はゆっくりと振り向き、ふわりと彼の傍に来た。

(ありがとう、兄さま)

 微笑んだ右京は、再び光の玉になると、屍狼丸の左目に吸い込まれるように消えた。光が消えると同時に屍狼丸は人型の四郎に戻り、広綱に頷いて見せる。右京の魂は、無事に妖から解き放たれたということだろう。
 安心した途端、広綱は強烈な疲労感に襲われ、その場に倒れこんで気を失ってしまった。

「広綱様ぁ、風邪引きますぜ」

 苦笑いしながら一八が右京の着物を広綱にかける。

「形見になっちまいましたな。しっかし、あれだけ燃えてた割にゃ小さい焦げしかありませんなぁ」

 右京の着物はあれだけの炎の中にあっても、初めに広綱が放った式がつけた小さい火による焦げ目だけで、大した損傷なく残っていた。着ていた妖は炭になったというのに。

「あの炎は、不動明王の邪気を祓う火じゃ。あの火に焼かれればあのような妖、ひとたまりもないわ。この者も知ってか知らずか、闘神の呪を破魔矢に乗せおったしの」

「源氏の守神でやすか」

 炭になった妖から妖女姫の釵子を引き抜き、一八は袖で汚れを拭き取った。

「源氏の者は術師が多い。この者も、その系統を受け継いでおるのじゃろう」

 一八から釵子を受け取り、髪に挿しながら、妖女姫は踵を返した。

()ぬるぞ、一八」