〈2013年〉
それは、彼の些細な一言から始まった。
「あー頭痛い……」
「どうしたの?大丈夫?」
「寝不足かな……」
「あー、また遅くまでゲームしてたんだ。
 もう、だからでしょ」
そう言うと苦笑いをする彼は葉山凉介。
私と同じ20歳で私の恋人でもある。
「ちゃんと寝ないといつか倒れるよー」
「わかってるって」
前も同じような会話をしたような。
でも凉介はゲーム大好きだししょうがないかな。
「でも最近視力も下がっちゃってさー」
「ほらぁーやっぱゲームし過ぎなんだよ。
 しばらくやめときなよ」
ゲームが大好きな凉介のには酷かもしれないけれど。
凉介の健康が一番だと思うから。
「しょうがない、しばらくゲームはやめとくわ」
「そうしなよ」
そんな他愛もない会話をしながら、大学から2人で同棲する家に帰るのが日課。
ゲームが大好きでついつい深夜までゲームをしてしまう彼氏と、そんな彼氏の体調を気遣う彼女。
どこにでもいる普通のカップル。
普通に仲が良くて普通に幸せで普通にいる普通のカップルだってずっと思っていた。
でももしかしたら、このとき既に私達の「普通」は崩れかけていたのかもしれない。