はじめまして、あなたが私を召喚したお客様でしょうか。

え、『お前は本当に悪魔なのか?」ですって?

はい、その通り正真正銘の悪魔でございます。

悪魔といっても礼節は(わきま)えておりますし、何よりお客様と交わした契約はきっちりと履行致します。

神や天使たちは『お前から清らかな心が失われた。』などと言って契約を一方的に反故にすることがありますが、
我々悪魔にはそういった心配はございません。

一方的に契約を反故にするなんて悪徳業者もいいところ、彼らこそがまさに『悪魔』なのでは
ないでしょうか。

神や天使には私どもも手を焼いております。奴らは私たちとお客様の契約にも口出しをしてきますし、私たちから強引にお客様
を奪ってくることもありますから、私たち悪魔が最も忌み嫌う競合相手ですよ。

さて、契約の簡単な説明を致しますと、

・悪魔と人間の契約は絶対であり、どちらかが一方的に破棄することはできない

・人間は叶えたい望みを悪魔に伝え、悪魔はこれを実行する

・人間が悪魔に払う対価は望みの重さによって決まる

となります。何か質問はございますでしょうか?

ございませんか、それなら早速お客様のお望みをお聞かせください。

『莫大な富が欲しい』ですか、かしこまりました。

そのお望みですと、対価としては、、、そうですね寿命を20年ばかりいただきましょう。

この契約内容でよろしいでしょうか?はい、ありがとうございます。

それではこの契約書にサインのほうをよろしくお願いします。

これにて私とお客様の契約は完了いたしました。

お客様のお望みになった莫大な富はすでにお客様の銀行口座のほうに振り込ませていただきました。

お客様は契約の通り元々のご予定より20年早くお亡くなりになります。

それでは私は帰らせていただきます。

『後から気が変わった』などと言ってクレームを入れてくることがございませんようによろしくお願い致します。

くれぐれも、神や天使どもに頼んで契約内容を破棄なさることなどはおやめ下さい。その時はきっちりと、違約金(いのち)を頂くなどの対処をさせていただきます。

私たちが契約を反故にすることはございませんし、()()()()契約はお互いの信頼関係が大切にございます。

それでは、またのご利用をお待ちしております。