子供の頃、自分の葬式の夢を見て、泣きながら起きたことがある。
それはまだ、生きるよりも死ぬことが怖かった日のこと。
『──……さんが、第一子となる女の子の出産を報告しました』
朝の情報番組で、女性芸能人の出産が報道された。
彼女の笑顔の写真と共に、芸能事務所から発表された、直筆の文章が液晶画面に映し出される。
──かわいそう。
こんなところに、人間として産まれるなんて。
こんな世界で、死ぬまで生きなきゃいけないなんて。
私は、ひとり暮らしのリビングでコーヒーを飲み干し、テレビを消した。
他に誰もいない部屋を出て、鍵をしめる。
歩きにくいタイトスカートと、窮屈なスーツに身を包み、駅まで向かう。
混雑する駅のホーム。
響く、発車アナウンス。
──ああ、今日も駄目だった。
目の前で止まる電車を見て、ため息をひとつ。
私は諦めて、車内へ足を踏み入れた。
満員電車に揺られて、高いヒールを地面に必死に付ける。
倒れてしまわないように。
もう疲れたのに、まだ生きるよりも死ぬほうが怖い。
その感情は、私にとって不幸なものだった。