電話を切ろうとしたら、『そう言えば』と声がした。

『紫蘭っていい子でしょ?』
「ん? ん、ああ」

彼女のことを思った途端に話題に上るなんて、まるで心を見透かされているようだ。ネタにされるようなことを言わないように気をつけないと、後が怖い。

『賑やかにはしゃいだりするタイプじゃないけど、さり気なく助けてくれたり、一緒に悩んでくれたりするんだよ。景ちゃんも、図書委員、紫蘭と一緒でよかったと思うよ?』
「うん……、そうか」

たしかに、そういう誠実な人柄は感じられる。

『でもね』

いちごの笑いを含んだ声。

『落ち着いているようなのに、ときどきびっくりするようなことを言ったりするんだよ。本人は大真面目なんだけどね』
「ああ」

なるほど。今日の質問もその一つということかも。本人は真面目ということは、たぶん、あれこれ考え過ぎているのだろう。

『まだあんまり話す機会なかったけど、これから一年間一緒だから、よろしくね』
「うん。こっちもな」

大鷹も含めて「よろしく」ということだろうか。だったら、彼女とも話す機会が増えるかも知れない。

やっぱり幼馴染みは気楽だ。いちごが諒の彼女だということも、もう一つの安心要素だ。

俺にも、俺をそのまま認めて好きになってくれる誰かが現れるといいんだけど……。

でも、俺の何を好きになってもらえるんだ? 何も自慢できることなんてないのに。