「なんで私がこんな目に遭うんだ……!」

 私は何度も短い息を吐きながら、化学室に入ってすぐのドアの前に座り込んでいた。
 そう。逃げた先は化学室だった。

 窓の外には、中庭にある大きな時計台が見える。時刻は17時。紫がかった空の色はとてもきれいで、こんな状況でなければ『うわぁ、きれい!』と無邪気にはしゃいでいたことだろう。

 しかしながら、今はその時ではない。
 私は限界まで体を小さくして、ただ、嵐が過ぎ去るのを待った。

「ひよりー?」

と聞きなれた声が遠くからする。
 私は、ひっ、と声を出しそうになる口を自分の両手で抑えて、身体をガタガタ震わせていた。チワワもびっくりの震え具合だ。

 こわい。
 何よりこわいのが、蓮がやけに楽しそうに追いかけてくることだ。

 なんで!
 どうして!