俺は海斗 驍二十三歳。

一年前、大学を卒業して、大手のホテルリゾート会社に勤務していた。

俺のお袋はこの会社の社長と恋に落ちたのだが、身分違いの親父の元を黙って去ったのだ。

俺を一人で育て苦労した。

大学まで出してくれて、だから、大手に就職して、お袋に楽させて上げたかった。

まさかこの会社が、親父の会社とは知らずに試験を受けた。

見事に合格して、その事をお袋に注げると、大反対された。

「なんでだよ、大手だよ、頑張って、給料たくさん貰って、お袋を楽させてやるから」

お袋はこの後、何も言わなくなった。

俺は頑張って働いた。

ある日、社長室に呼ばれた。

「海斗君、入社して一ヶ月が経過したが、仕事はどうかね」

「順調だと思います」

社長は俺をじっと見つめていた。

なんだよ、なんかミスしたかな?

すると社長は俺の履歴書を手元に置き、なぜかお袋のことを聞いて来た。

「海斗君は父親はいないのかな」

「はい、母と二人です」

社長は俺の履歴書をじっと見つめていた。

「お袋さんはご苦労されたんだろうな」

「はい、若い頃からあまり身体が丈夫ではなかったみたいで、でも俺を育てるのに無理した為、今は寝たり起きたりの状態です」

「そうだったのか、何か困っている事はないか」

なんでそんな事を聞くのかと不思議だった。