琴葉のアパートの前に中村がいた。

俺は慌てて琴葉の身体から抜け出した。

琴葉はその場に倒れた。

そんな様子に気づいた中村は琴葉に駆け寄り、「大丈夫ですか」と声をかけた。

「中村さん」

「あの後気になって、どこに行ってたんですか、こんな夜遅くに」

「驍の側に行こうかと」

「何言ってるんですか、自殺したら、黄泉の国へはいけないんですよ、自殺した魂はずっと地獄を彷徨うんですよ」

中村、よく言った、俺の言いたい事そのままだ。
「だから、阻止されたんですね」

「阻止?」

「はい、大通りに飛び出したら、私の身体を抱き抱えて、歩道に下ろしてくれたんです」

「助けてくれた人がいたんですか?」

「はい、人じゃないんですが」

「えっ?」

「霊体さんです」

「霊体?」

「私、霊感があって、感じるんです」

中村は驚きの表情を見せた。

「海斗ですよ、きっと」

バカ、何言い出すんだ、バラしてどうするんだよ。

「驍?」

「僕は普段は何も感じないんですが、最近、変な事ばかり続いて、この間喫茶店であなたと話したのは僕じゃないんです」

「やっぱりそうなんですね、まるで別人ですもん」

「海斗かもって思いませんか」

「そうですね」

琴葉は中村の言葉に考え込んでいた。