「今日、カレーだね。私1番好き」
「俺も」
「わたしも」
何気ない休み時間の会話。
あちらこちらから笑い声、騒ぎ声が聞こえる。
そしてこのグループも例外ではない。
「昨日のブルースカイ見た?」
「見た見た、葵くん美形だよね。」
「うん、もう惚れ惚れしちゃう。」
女の子同士特有のアイドルの話。
ライブ代、グッズ代、美容代。
推しの為に女の子は綺麗に美しくなろうとする。
そして数少ないお小遣いから、時には両親の目を盗んで財布から。
「椛ちゃんは、スカイブルーで誰が好き?」
「紫亜くんかな」
「いいね、子犬みたいで可愛いよね」
「わかる、わかる。あのギャップ萌えな感じが堪らない」
アイドルなんて本当は興味がない。
だけど、学校生活の中で相手に共感することは必須事項だ。
雑誌、ネット、あらゆるツールを駆使して情報を集め、予習する。
だけど変に出しゃばってはだめ、あくまで受け身の姿勢で聞く。
「葵くんといえば、隣のクラスの泉くん、顔立ちそっくりだよね」
「あ、わかる!あの端正な顔立ちがたしかに似てるね」
「あ、でも彼女いるんだよね」
“ 泉くん”
時々、女の子同士が集まって彼の噂をする。
私は実際に会ったことはないが、よく、テスト順位の貼り紙などで彼の名前を見つける。私も上位に入る方だが、彼は異例だ。
優等生、容姿端麗。
小説の中の主人公が恋する登場人物かのよう。