13. 悲しげに見えた梨奈の顔

   予定通りに19時のバスにご家族で、「大文字の送り火」へ行かれ、21時30分頃に帰って来られた。



   私はその日、部屋が満室になったことで安心をしていた。



   深夜0時過ぎのことであった。



   ナイトスタッフの仲田が、
  「小池様という若い女性が呼んでいますよ」と言った。



   私はすぐにフロントカウンターへ出ると、





  「どうかされましたか? こんな遅い時間に...」と私が言うと、





  「今日はありがとうございました。両親も非常に喜んでくれて、さっきまで久しぶりに家族と部屋でおしゃべりをしていました。最高の思い出になりました」と梨奈が言うので、





  「それは良かったですね。私もすごく嬉しいです」、





  「おやすみなさい」と彼女は言って、部屋へ戻った。



  その時、彼女は嬉しいはずなのに、私には少し悲しげに見えたことが気にかかっていた。