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「僕が呼び出される理由って、喧嘩じゃなかったみたいだね」


教室に戻ってから須賀君は照れくさそうに頭をかきながら言った。


もちろん、あたしも理穂も無事に教室に戻ってきていた。


一発殴られたのは痛かったけれど、それ以外に怪我はしていない。


ヤンキーたちはひたすら須賀君をもふもふすると満足して戻っていってしまった。


「そうみたいだね」


あたしはガックリと肩を落として答えた。


それならそうと先に言ってほしかった。


須賀君だって喧嘩を売られていると勘違いしたから今までオナラで撃退してきていたのだから。


「結果オーライってことかなぁ」


理穂が殴られた腹部をさすり、首をかしげている。


あたしたちを拉致してまで須賀君をもふもふしたかっただなんて、思い出すとちょっと笑える。


あたしはそっと須賀君の背中に触れた。


フワリとした毛に自分の指先が埋もれていく。


心地よさにうっとりと目を閉じる。


確かにこのもふもふは全員で分け合ったほうがいいかもしれない。


そんなことを思ったのだった。