と、よからぬ想像をして手足をばたつかせたとき、理穂が何かに気がついたように視線を男子たちへ向けた。


それにつられて視線を向けると、奇妙なことに気がついた。


男子たちは一様に扉のほうへ視線を向けているのだ。


あたしたちの目が覚めたことなんて誰も気がついていない。


あれ、どうしたんだろう。


ほら、美女2人はお目覚めですよ?


あなたたち、お楽しみタイムとか、そういうんじゃなくて?


声に出さずに混乱していると、体育館倉庫の扉が左右に開かれた。


両手を極限まで伸ばして少しだけ扉を開き、怒りを体中ににじませてその場に立っていたのは……須賀君だ!


須賀君の小さなシルエットが男子たちの足の隙間から見え隠れしている。


うつむき加減に立っている須賀君からは先ほど感じた怒りが感じられ、足元にはスモークでも立ち上ってきそうな雰囲気だった。


「よぉ、来たか須賀」


金髪が一歩前に踏み出して言った。


「2人を返せ」


須賀君のものとは思えない低い声が聞こえてきた。


それは背筋が凍るほどに冷たく、怒りに満ちた声だ。


その声にひるんだ男子も数人いるみたいだが、今日は人数が桁違いだ。


全員逃げ出す様子はない。