それからというもの、毎日のように須賀君目当てで1年B組にやってくるヤンキーがいた。


ヤンキーなりたての初心者から、3年生のラスボスのような体格のいい生徒まで様々だ。


しかし須賀君は負けなかった。


呼び出されて教室から出て行っても、次の授業に間に合うように必ず戻ってくる。


そして呼び出した相手が気絶した状態で見つかるのだ。


「僕は最強でもなんでもないのになぁ」


中庭でお弁当を食べながら、須賀君は空を見上げて呟いた。


「勝っていることは事実だからねぇ」


須賀君の必殺技を知っているあたしはなんと言えない。


「僕は喧嘩なんてしたくないんだ。呼び出してくるのは怖い人ばかりだし、殴られると思っておならをして逃げたら、次の日にはもっと怖い人が来るし。どうすればいいんだろう」


「今では無敵で優しいヤンキーって呼ばれてるもんね」


須賀君は困ったように眉を下げてあたしを見た。


「僕はヤンキーなんかじゃないよ。だから嫌いにならないでね?」


困り顔で小首をかしげてそんなことを言われて、嫌いになるなんてありえない。


須賀君最強説が出たって須賀君の可愛さは健在だ。


ズキューンッと見事心臓を打ち抜かれてしまった。


喧嘩上等の鉢巻を巻いて特攻服姿の須賀君を想像する。


それはそれで似合っていて可愛いので、もうなんとも言えなかった。


そんな須賀君が悩んでいるのを見過ごすわけにはいかなかった。


「大丈夫だよ、あたしがついてるから!」


胸をドンッと叩き、その衝撃でむせる。


須賀君は慌ててあたしにお茶を差し出したのだった。