それに、水無月くんがいない学校はいつもよりもつまらないと思ってしまったのも事実なので、あまり強く否定もできない。
でも、男女間でその言い方は、激しく誤解を招くような気がする。
何か言わなければと思うのだが、水無月くんの嬉しそうな笑顔を見ていると、浮かんだ言葉が声にならずに消えていく。


「僕もね、瀬戸さんに会えなかったからか、何だか調子が出なくて、ぼんやりしている時間が多かったんだよ」


自分も同じだったと言いたいのかもしれないが、水無月くんのそれは完全にただの風邪だ。


「こういうの、以心伝心っていうのかな」


絶対に違うと思う。
嬉しそうなところ大変申し訳ないが、水無月くんのはただの風邪の症状で、私のはただのみんなの勘違いだ。

ひょっとして今この瞬間クラスメイト達には、私が水無月くんの風邪が治ったことを喜んでいるように見えているのだろうか。
別に悲しんではいないが、特別喜んでもいない。

それを伝えたくても、いつも通りクラスメイト達は誰一人こちらを見向きもしないし、気にも留めていない。
だから、なんだかもう、いいかなと思った。