言わせたの君たちだけどね、と思いながらも私は素直に「うん」と返事した。


「この人は? リツカっていう最近人気のモデルなんだけど」

「えー、興味ないかな……」

「抱かれたい芸能人一位なんだけどなぁ」


抱かれたいか、いやはや前に店長に抱きしめられた時のことを思い出した。細そうなのに結構ガッチリしてた体とか、大きい手とか、高い身長とか……店長には抱かれたいって思うかも。
元々テレビを見ない私は芸能人の名前すらうろ覚えで、だからクラスの女子の話題とかについていきにくい。恋バナとかだったら出来るのになぁ。残念だ。


「まぁ、ウチの店長を超えるのは難しいんじゃないかな」

「そのさぁ、店長のこと私たち知らないから」

「イケメン?」

「イケメン……だよ、多分」

「瑞希のイケメンってどんなのかな」


いや、店長はイケメンでしょう。まぁ桐谷先輩とか蒼先輩と比べたら多分そっちに視線が行っちゃうと思うけれど。だけどもし店長を単体で出したら10人中8人は格好いいっていうんじゃないかな。
そうだな、例えるならばスーツのCMに出ている俳優さん的な感じ。

私は咄嗟に「気になるなら見に来ればいいじゃん」と言った。すると二人は揃って目を丸くする。


「え、いいの?」

「駄目って言ったことあるっけ?」

「無いけどー、でも瑞希ってバイト先に友達とか来るの嫌なタイプじゃ無いんだね」

「だって普通にここの学校の制服着た人来るよ?」お仕事のお邪魔かと、と控えめに言う光里に手のひらを振る。


「邪魔さえしなければ、それに夕方とかはまだ空いてるし接客も担当できると思う」

「へー、じゃあ今日行く?」

「だね、瑞希の言う例の店長を見に」

「イケメンを見にね」

「イケメンか」

「好きにならないでね」

「大丈夫、うちら年上好きじゃないから」


ならば安心だ。というか店長を好きになってから安心ばかりだ。元々ああいう性格から女性にモテるタイプじゃないし、職場には店長と同世代の独身の女性もいないから狙われる心配もない。だから目一杯アタックできるんだよね。
私はふふんと足を振る。今日会ったら店長に言わなきゃ、友達が来てるから紹介させて欲しいって。そしたら私たち友達公認のカップルじゃん。

今日のバイト、楽しみになってきた。