そう、あれは私が高校に入学して間もない頃。
部活も入っていなかった私は学校が終わり家に帰ろうと駅を着いたとき、有名な不良高校の男子に絡まれてしまったことから始まる。
高校の制服を覚えているから避けようと思えば避けれたけれど、試験終わりの疲れからぼーとしていたこともあって、気が付けば身に覚えない男三人組に囲まれていた。
夕方の人通りが多いところで絡まれたが、周りの人は見て見ぬふりで去っていく。
「あれ、もしかしてまだ高校生になったばっかり?」
「かーわい、初々しいねぇ」
「ちょっと、俺たちと一緒に遊んでいかね?」
髪の毛が赤、黄、青……ってお前ら信号機かよ!?、なんて自分にしては秀才過ぎるツッコミを心の中のみで済ませた。
ていうかこれってナンパですか!? 高校生になったらナンパされるんですか!? 聞いてないですけど!
なんて考えている場合でもないらしく、彼らの言葉に耳を貸さず無視していると一人の男が私の右腕を掴んだ。
「そうだ、カラオケに行こ! 俺の美声に酔わせてやるよ」
「おまっ、美声って! 鼻声の間違いだろ!」
「おいおい、馬鹿にすんなよ!」
美声が鼻声って、不良校の生徒にしては面白い洒落を思いつくものだ。
ゲラゲラと下品な笑い声をあげる三人組に私も呆れたような笑みを零す。今私から目を離している今が逃げ時なのかもしれない。